若者応援企業宣言事業の始まり

他人事のように思っていられない

今現在、この瞬間を仕事がしていられる15歳以上34歳以下の若者と呼称される人々は感謝するべきなのかもしれない。筆者も年齢的にはこの中に含まれているので、雇用や収入面といったことを含めないで仕事をこなしているという状況をむしろ喜ぶ必要がある。仕事が楽しいかつまらないかという問題もあるかと思うが、順調に日々仕事をこなせていることは誰でも当然だと思っているが、昨今では社会と自分が思い描いていた理想との乖離によって、働く意欲が損なわれてしまい、折れてしまう人がとても多い。結果、最近までの統計だけでも200万人以上ものまだまだ現役で働く事が出来る若者がいる。しかもこの数字はあくまで表面的なものだ、恐らく潜在的な面で言うならこれ以上いるかもしれない可能性も否定できない。

この若者無業者問題はNHKでも特集を組まれて放送されるまでになり、確実に日本の新たな社会問題として認知されている。以前からニートや引きこもりという問題は抱えていたが、それまで当然のように社会に出ていた若者が働くことに意味を見出せなくなる、また企業から受ける極度のパワハラによって精神的に追い詰められてしまい、労働に対して拒否感を出してしまうなどの問題もある。これについては牛丼大手メーカーの労働問題が一番良い例だ。社長を含めた幹部社員たちが自分たちの過去行ってきた労働を当然のように社員だけでなく、アルバイトにまで強制しているという独裁企業としての体質が露呈したことで、企業としてのプライマリーは低下したことだろう。第三者で構成された調査委員会が発表した内容から察すると、そんな中で社員達の度重なる労働量に耐え切れずストレスを抱え込むのは必死、そうなると先に所属していた社員達のストレスに対しての矛先が新入社員として入社した、若者へと向けられる。若者無業問題は何も彼ら一人だけの問題ではない、彼らより少し前に社会に出て働いていた人間の、企業から受ける圧力とも影響している事が理解できる事件だ。

成果が求められる資本主義社会としての欠点ともいえる、しかしそうした経験で日本は奇跡とも呼ばれる発展を遂げることに成功し、経済大国・先進国という肩書きを手に入れる事を出来た。過去の栄光を考えれば当然今でもそれくらいを求められるのは当たり前という風に考えている人もいるかもしれない、如何せん仕事をしたばかりの人間にいきなりこなすことの出来ないノルマを与えては、擦り切れてしまうのは目に見えている。国としては、そうした企業体質なども鑑みて今後日本が取るべき対応をしっかりと決めてもらいたいところだ。

そんな中で打ち出された若者無業者向けの案として、国が働く意欲を持っている若者を応援するべくある制度が作られた。それが『若者応援企業宣言事業』というものだ。

若者応援企業宣言事業とは

この若者応援企業宣言事業とは、平たく言えばここに求人募集をしている企業はそれなりに信用できるところだから、レッツ就職してみないかい? というものだ。簡単すぎるだろうというツッコミを受けそうなのでもう少し詳しく説明すると、厚生労働省が正式に定めた、ある一定の労務管理が体制として行えている企業だけをピックアップし、34歳以下の若者を対象にして中小企業への就職を斡旋するための施策である。これによりどのような危機を回避することが出来るのかといえば、一言で言うなら『ブラック企業』などと名指しされている企業への就職を事前回避することが出来るということだ。ブラック企業という言葉を聞くだけで背筋が凍るような思いをしたという経験をした人もいるかもしれない、もしくは絶賛そのような状況に陥っている人もいるかと思う。働いている内は問題ないが、これから企業に就職を検討している就活生、色々とあって求職活動をしている人などには事前にその募集要項を見るだけでも価値のあるものとなっている。

各大手検索エンジンサイトでも、『ブラック』という言葉を入力するだけで変換候補にブラック企業が最有力候補として浮かび上がってくるほど、もはや日本社会に恐ろしいほどに定着している言葉だ。筆者も時々調べたりしているが、中には本当に辛い労働環境に押し込められている人の心の叫びを目撃することもあるが、時には同情を覚える事の出来ない利己的な意見を見ることもある。その人からすれば苦痛なのかもしれないが、ネット上ではとにかくブラック企業という言葉が蔓延している。

そしてその影響は現実の企業にまで侵食しているほどだ。今ではインターネットと言う電子世界での影響は現実のものとして跳ね返って来るのが常だ、そのため企業はそのようなレッテルをネットで批判されてしまうものなら人事などの影響は免れないと考えているほどになっている。その中でも社会という労働システムの中で特に問題視されているのが、外食産業がその例だ。先に話したゼンショーはもちろん、大手有名居酒屋などにそのこみ上げてくる怒りの矢が向けられていた。

根性論では人は動かない

外食産業において大手有名店として名を連ねた企業には、ある1つの特徴があると専門家は語っている。企業としてそれほどまだ大きくなかった時、企業としての質や規模を拡大させるためには『無理して働いてでもする必要があった』、という点だ。これはどこの業界でもそうだが、飲食関係はその中でも最も顕著な部分だ。それは良いとしてもだ、さすがに深夜の時間帯に一人で作業をするオペレーションなどといった無謀すぎる仕事では、どう考えてもアルバイトも社員も企業についていくことは出来ない。結果、ゼンショーは牛丼前線から少し離れることとなり、改善が求められるようになった。居酒屋でも労働に見合わない仕事を押し付けられたら割に合わないと考えるのが必然、だからこそ若者達は自分たちを使い潰すための捨て駒として扱う企業に就職したいとは思わない。この若者応援企業宣言事業にて登録表明した企業を利用する事は、そうした労働環境の圧迫から逃れるための制度ということだ。

先の時代に通じていた仕事論は時代遅れ?

ゼンショーを初めとする外食産業の労働体制から把握すると、日本でこれまで培ってきた労働モデルの典型的とも言える理念が通じなくなっている事が分かる。言うなれば無理して働いていれば成功するという、根性や精神力をものにしたものだ。今の若者は軟弱だなどといって、自分達のしてきた事をそっくりそのまま科されて耐えられるというのは少しおこがましく思える。そもそもそれ以前から雇用に見合わない仕事を押し付けられて耐えられるほど、人間器用にできているわけではない。筆者も一度そういった経験をして、職場最高責任者に怒り心頭でNo.2だった社員に対しての不満をぶちまけたこともある。それも自分が楽するために仕事を押し付けているという理不尽さだ、アルバイトとして働いていた人間で対して給与の変わらない中で社員並みに労働を強いられる事実に、あの時は爆発した。

要は、労働がその他の待遇とキチンと見合っていなければ仕事をしても割に合わないという現実的な面で、不満を持たせる結果になってしまったのだ。安い月給でこき使われて残業代も支給されないでは、働いても我慢を求めるのは無理がある。無理を強いるのであればその分見合う対価を与える、そうしなければどんなに強い精神力を持っている人でもいつかはオーバーヒートしてしまう。この厚生労働省が制度とした企業に応募する就職希望者は、そうした辛さに合わない為の手段として用いられていると考えた方が自然だろう。

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